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「死」について、子どもにどう教えるべきか?

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    2015年7月に発売された『ママがおばけになっちゃった!』(講談社)は、半年で300万部以上売れた、日本の新刊絵本では異例のヒット作です。母親の子どもへの愛情を「死」という設定で描いているのですが、その独特な表現に共感したタレントたちがテレビで紹介し話題にもなりました。子どもに「死」という現実をいつ、どう教えるべきか? それはとても難しいことです。この絵本は、そんな気持ちをもつ親が選んだ1冊といえます。

    母親の「死」がテーマの絵本

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    このお話は、主人公の4歳児 かんたろうくんのママが、ある日突然交通事故で死んでしまう、という設定で始まります。ママは死んだ後も、かんたろうくんが心配でおばけになって現れ、かんたろうくんを励ますのです。

    母親の「死」という深刻なテーマなのですが、おばけのママと残された家族とのやりとりが非常に軽快に描かれています。重たいテーマに対しユニークで楽しい表現のアンバランスさが特徴的でもある絵本です。これは、作者であるのぶみさんの狙いだったそうですが、「死」をテーマにした絵本がこれほど日本人の母親に売れるとは、誰も思っていなかったかもしれません。

    ほとんどの母親、そして父親は、子どもという「生」を授かった瞬間から、「死」を意識するのではないでしょうか? 「子どもが死んだらどうしよう」、「子どものために死ぬことはできない・・・」など、「生」への責任感が家族の強い絆を作っていきます。

    ですから、その絆を永遠に絶ってしまう「死」は、他の動物にはない感情というものをもった人間には本当に厳しい現実で、身近な人であればあるほど、「死」を受け入れることが苦痛になります。親と子の関係は、その究極であるといえるでしょう。子どもを亡くした親、親を亡くした子どもの気持ちには、絶望しかありません。

    「そういう子どもの気持ちを考えたとき、自分がもし亡くなったとしても、私は子どものそばにいることを、自然に伝えてくれる本だった」と、ある読者は語っていました。明るすぎる表現は、読者となる子どもに「本当は、ママは死なないよ」を前提にしているからだともいえます。

    軽すぎる母親の「死」に、子どもの絵本として批判も

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    事故や事件、災害などで突然の身近な人の死に直面すると、人間は強い衝撃を受け心のバランスを失い、心的外傷後ストレス障害(PTSD:Post Traumatic Stress Disorder)というような精神が不安定な状態が持続する後遺症が現れます。大人は「自我」が発達しているため、現実に起こったことを客観的に捉え感情をコントロールする機能を働かせることができますが、子どもの場合、衝撃を防衛する「自我」が未発達なため、心に深刻な影響を受けるといいます。

    東日本大震災後で突然「死」を知った、多くの子どもたちにもPTSDが現れ、専門家による子どもの心のケアの重要性が求められました。どんな子どもでも、親や身近な人の「死」がどれほど大きな衝撃を心に与えるかは、専門家でなくても容易に想像がつきます。子どもの心を育むことに大きな役割を持つ絵本の世界では、以前から大きなテーマとして「死」がありました。

    そういう意味で、この『ママがおばけになっちゃった』の、笑って泣けるハートフルストーリーという軽すぎる母親の「死」の扱い方は、ヒットとは反対に一部の絵本関係者や専門家の間で批判も起こりました。しかし、どちらにしても、子どもに「死」をどうやって教えるべきかを大人に考えさせる話題の1冊になったことは間違いありません。

    「死」は無理やり教えるものではない

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    そもそも、「死」とは教えなければならないものなのでしょうか? 社会で人が仲良く生きていくために、感情のコントロールを学ぶことは、子どもに必要です。しかし、「死」というのは、やはり体験してから時間をかけて癒されるもので、「もし、ママが死んだらどうする?」を事前に教えるよりも、子どもが「死」を知ったときに、大人が一緒に傷づいた心を受け止めてあげることが、何よりも大切だと思います。また、そのための絵本は、もっと「死」の本質の触れたものでなければ、余計に子どもを傷つけてしまいます。

    それでは、「死」について親は、全く触れなくてもよいか、というとそれも少し違うように感じます。なぜなら、「死」という不幸を体験した友だち、動物の「死」など、日常生活から間接的な「死」を子どもは受けているからです。相手の悲しみに寄り添う心。それを絵本から読み取ることは、優しさにつながっていきます。

    本質的な「死」を子どもに理解させることは無理ですが、親が語ることで「死」の悲しみを乗り越えることは、大切だと漠然と感じることはできます。ただ、「死」を知らない子どもたちには、あまりリアル過ぎる死の表現は、親がいなくなるかもしれない、というストレスにもなりかねません。

    この「死」についての教育は、子どもの育つ環境や親の価値観で考え方が異なるところですが、私は直接的な「死」の体験の有無に関わらず、子どもが自分一人で絵本を読んで学ぶものではないと考えています。大人の見守りのなかで、その子どもが必要としている、「死」の悲しみに共感できる絵本を、必ず一緒に読んであげることが子育てでは重要だと思います。もしかしたら「死」をテーマにした絵本は唯一の大人が選ばなければならない、子どもの絵本の分野かもしれません。

    そういう意味で、『ママがおばけになっちゃった』は、「死」がどんなものか想像もできない子どもを、無理やり悲しい気持ちにさせるのではなく、自分はこう思っていると伝えたい母親の心に反応する絵本です。「死」を遊び感覚で教えることの危険を親が忘れずに、子どもに優しく読んであげるのであれば、悪い絵本ではないと思います。

    『ママがおばけになっちゃった!』 出版日2015/07/17
    ISBN-139784061332676
    出版社:講談社

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