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日本初のシングルマザー専用シェアハウスを作った建築家・秋山怜史さんにインタビュー

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    子育てのミカタインタビュー企画、今回は日本初のシングルマザー専用シェアハウスシングルマザー向け不動産ポータルサイトを立ち上げた建築家の秋山怜史さんにお話をうかがいました!

    シングルマザーの住宅問題に取り組んでいる理由は?家ではどんなパパなの?などなど、気になることをどしどし聞いてきましたよ。

    建築家・秋山怜史さんのプロフィール

    1981年生まれ 現在38歳
    2008年 一級建築士事務所秋山立花を設立(立花は秋山さんのお母さんの旧姓だそうです)
    2012年 日本初のシングルマザー向けシェアハウス「ペアレンティングホーム」を立ち上げる
    2015年 シングルマザー向け不動産ポータルサイト「マザーポート」を開設
    2015年 結婚
    2016年 娘さん誕生

    その他にも、シェアオフィス「cosmos」の運営、そしてもちろん住宅や保育園の設計などなど、書ききれないくらい様々な活動をされています。

    ※1年で20万組以上が離婚!ひとり親家庭が抱える問題とは?

    厚生労働省の発表によると、2017年の離婚件数は21万2000組

    さらに2009年のデータでは、離婚率が最も高いのは30〜35歳と出ています。

    30〜35歳と言えばまさに子育て世代

    「うちは離婚しないから大丈夫!」と思っていても、死別の可能性もゼロではない以上、ひとり親家庭の問題は他人事ではありません。

    子育てをする時間がない、住む場所や働く場所が見つからない、十分な生活費が得られないなど、ひとり親家庭が抱える様々な困難は、大きな社会問題となっています。

    編集部がひとり親家庭の支援について調べていたときに見つけたのが、秋山さんが立ち上げたペアレンティングホームとマザーポートでした。

    独身だった秋山さんが、シングルマザー向けシェアハウスを作ったのはなぜ?

    ↑ペアレンティングホームでの食事風景。賑やか!

    それではよろしくお願いします!

    お願いします。

    早速気になったことをお聞きしていきますね。

    ペアレンティングホームやマザーポートを始められたとき、秋山さんはまだ独身でしたよね。シングルマザー支援を始めたきっかけはなんですか?

    ※ペアレンティングホームって?

    秋山さんが、保育園経営者の石尾ひとみさん、不動産事業者の細山勝紀さんと3人で立ち上げた、日本で初めてのシングルマザー専用のシェアハウス

    週に1回、チャイルドケアシッターさんが子供たちのお世話をしながら夕食の準備をしてくれます!

    介護施設の職員寮として、仕事と住居の問題を一気に解決できるシェアハウスも。

    他にも、子供同士が仲良く遊べたり、親同士が悩みを相談したり助け合ったりできる、大きな家族のような雰囲気の場所です。

    ペアレンティングホームのホームページはこちら

    そうですね。独身でしたし、ひとり親家庭で育ったわけでもないですし、当事者ではないのでよく不思議がられます。

    もともと、「仕事と子育てが両立できないのはおかしい」「なんとか解決したい」といろんな人に言っていました。皆さん「いいね」とは言ってくださるんですが、リスクを取って自分でやろうという人はなかなか現れないんです。

    そんなときに、保育園の経営者でありシングルマザーでもある石尾さんと出会ったことが縁で始まりました。

    以前から社会問題に興味をお持ちだったんでしょうか。

    「社会の不条理を解決したい」そこに対して、「誰もやっていないことをやってみたい」という気持ちがもともと強いんです。

    あとは、秋山立花の理念でもあるんですけど、「社会と人生に、新しい選択肢を産みだす建築設計事務所でありたい」と常に考えていました。

    確かに、新しい選択肢だと思います!似た境遇の親子と助け合えたら、子育てでも親の精神面でも救われることが多そうです。

    シングルマザーの子育ては、やはり子育ての現場で1番しんどいところですから、この取り組みから派生していろんな家族の形が増えたらいいなと思いました。

    それに、シングルマザーだと不動産を借りるときに不当な扱いを受けるケースもあるんです。離婚して収入が安定していなかったり、連帯保証人を頼める人がいなかったり。不動産オーナーが入居を拒む事例もあります。今まで住んでいた地域から離れざるを得ない人もいます。

    まず住む場所を見つけないと、生活できないですよね。

    ペアレンティングホームは保証人がいなくても入居できます。と言っても、家賃はきちんと払っていただかないといけないので、収入などの審査はあります。仕事も同時に探している方には、介護施設の社員寮として整備したペアレンティングホームに入居するという方法もあるんです。

    すごい!仕事と住居の両方が解決するシェアハウスもいいですね。シングルマザー向けのシェアハウスは、まだどこにもなかったんですよね。

    そうです。「いい取り組みだな」「やってみたい」と考えていた人はいたかもしれませんが、やはり実現するのは大変なんです。大家さんの理解も必要ですし。

    ペアレンティングホームの大家さんはどういった方なんですか?

    賛同してくださった個人の大家さんから借り上げて運営している形になります。

    現在はシングルマザー専用ですが、シングルファザーやひとり親ではない家庭向けのシェアハウスを作る予定はありますか?

    シングルファザーはシングルマザーの10分の1しかいないので、なかなか人が集まらないんです。離婚後は女性が家を出るケースが多いですし、母子家庭は増加傾向なので、当面は引き続きシングルマザー専用でがんばって行きます。

    シングルマザーの中には男性恐怖症になってしまっている方もいるので、そういった意味でも女性専用としています。

    なるほど……。入居者されている方はどのように生活されていますか?

    大きなリビングがあるので、子供たちはそこに集まって一緒に遊んでいます。大家族のきょうだいみたいになりますよ!

    ママからも、「子供同士で遊んでくれるから、手が空いて助かる」「話し相手や相談相手がいて嬉しい」という声をいただいています。

    全国に広がる、ひとり親居住支援

    ↑秋山さんが設計した保育園

    秋山さんが携わっているペアレンティングホームは、現在何件あるんでしょうか。

    一時は7件ありましたが、現在は4件です。稼働率も、現状では80%くらい。普通、賃貸住宅の稼働率は90%以上が理想なので、ちょっと足りない状況ですね。

    すごく需要がありそうなのに、意外です。

    まだまだ認知が行き届いていないということもありますし、そもそもシェアハウスでの生活が合わないという方も多くいらっしゃいます。

    てっきりバンバン儲かっているのかと……。

    経営面では決して順調というわけではありません。シングルマザー専用に限らず、シェアハウスでは入居者間の調整は必ず発生しますし、大変なことは多いです。

    志がないと続けられないですね。

    本当にそうです。ただ、シングルマザー専用シェアハウスの事業者は日本全国で着実に増えています。今後は僕が代表になって、「全国ひとり親居住支援機構」というNPO法人を立ち上げることも決まっています。

    全国に広がってますね!

    並行して、集客を強化するために2015年にマザーポートというサイトを立ち上げました。

    ※マザーポートって?

    シングルマザーを応援する住まいを検索できるサイト。

    その他、働くママへ向けたコラムや連載、ママが子育てと仕事の両立を語る動画といったコンテンツも充実しています!

    マザーポートはこちら

    事務所の経営的には、一般住宅の建築設計が柱になっているのでしょうか。

    そうです。ただ、現在のお客様の約8割が、ペアレンティングホームなどの取り組みを通じて秋山立花を知ってくださった方なので、そういう意味では経営への影響は大きいですね。

    確かに、建築設計事務所ってたくさんありすぎて選べない方が多いかも……。

    建築家はあまり名前が表に出ないので、どんな建築家がいるかを知ってる人はほとんどいないですよね。そんな状況の中、いろんな取り組みを通じて知っていただけるのはありがたいです。

    ちゃんと還元されていてよかったです。

    実現すれば日本初!産後ケア事業にも注力

    ↑秋山立花で手掛けた物件

    他にも注力されていることはありますか?

    今は、産後ケアの事業を進めています。妊産婦の死因は自殺が1位なんです。厚生労働省の調査によると、2016年までの2年間で産後1年までに自殺した妊産婦は少なくとも102人いたことがわかりました。これをなんとかしたいなと。

    具体的にはどういったことをされているのでしょうか。

    福利厚生の制度として、従業員や従業員のパートナーが産後ケアを受けられるよう、企業に提案しています。最初の数回分は企業にお金を負担してもらい、産後ケアを提供している方々を派遣していただく形で検討中です。

    これは嬉しい……。今でも、母親学級や自治体からの保健師派遣などはありますが、正直相性や当たり外れも大きいと聞きます。

    うちの妻も、出産した病院の助産師指導が合わなくて。「授乳前後に毎回乳首をアルコール消毒するように」と指導されていたんです。

    えっ!荒れませんか!?痛そう……。

    そうなんです。毎回大変ですし、非常にストレスになっていました。そんなとき、お義母さんがフリーの助産師さんを呼んでくれて、「消毒はしなくても大丈夫だよ」と言ってくれました。母乳マッサージや授乳の仕方など助言をしてもらって、かなりストレスが軽減されました。

    よかった……。お母さんに感謝ですね。

    産前産後についての教育が足りないと思うんです。男性は女性のつらさがわからないし、女性同士でもつわりが軽い人は重い人のつらさがわからなかったり。他人と同じ体験はできないので、せめて知識を入れる機会が必要だと思います。

    正しい知識を持つプロにサポートしてもらう機会って、意外と少ないですよね。運要素が強い……。

    ちゃんとした人に頼れる状況にしたいんです。それに、産後の離職が予防できれば、新たな人材を採用・育成するコストも削減できるので、企業にもメリットがあります。「産後も長く働きたい」という若者も集まるので、採用力アップにもつながるはずです。

    いいですね!国や自治体でやってくれるのが1番ありがたいですが……。

    子供向けの予算がなかなかつかない状況なので、まずはできることから民間でやっていければと思います。国や自治体への働きかけは今後も続けていきたいですね。

    自宅での秋山さんは、家事も子育ても分担派!

    ↑娘さんとリンクコーデ♪

    秋山さんは自宅ではどんなパパなんでしょうか。お忙しそうですが……。

    共働きなので、出来る限り分担するようにしています。洗濯、朝食、片付けなどの朝の家事と子供の支度、夕食の片付けは僕がメインです。あと、できれば週に1度は自宅作業の日を作って、送り迎えや夕食も全部やるようにしています。

    すごい!

    保育園の送り迎え、夕食、お風呂、寝かしつけは妻がメインです。

    いつから分担されているんですか?きっかけは?

    うちの実家の教育方針かもしれませんね。当時の感覚だと、社会に出たら「男は仕事、女は家庭」になりがちだから、家では逆のことをしろと言われていました。子供の頃から魚もさばけますよ!

    素敵なお母様ですね!うちも真似してみようかな……。家事育児の担当はどうやって決めていますか?

    5:5を目指して話し合って決めています。あとはストレスコントロールですね。ストレスを感じない方が担当することで、家庭内のストレスの総数を減らせたらいいなと思っています。

    自分のストレスだけでなく、家庭内のストレスの総数という視点があるのが素敵ですね。ママは大満足なのでは?

    僕の出張中はどうしても妻がワンオペになってしまいますし、夜に会食が入ったりもするので、そのあたりはフェアではないと思います。なので、できるだけ家にいるときは家事も育児もやりたいなと。

    秋山さんのお仕事については、何か言われることはありますか?すぐに儲けが出る事業ばかりではないと思いますが……。

    言われることはあります。ありますけど、新しいことに挑戦してるので、そこは理解してもらえてるんじゃないかなと。

    子育てで意識をしていることはありますか?

    基本的には好きなことをやってほしいと考えています。

    あと、本が読める子になってほしいので、本の読み聞かせをたくさんしています。僕の持論なんですけど、本が読めるようになると、わからないことがあっても自分で調べて解決する能力が身につくと思うんですよ。

    そうですね。視野も広がりますし。

    僕は実家で何かわからないことがあるとすぐ「広辞苑を引け!」と言われていたので、小学生になったら広辞苑を渡したいです。

    広辞苑!いいですね。

    今日はいろいろとお話していただき、ありがとうございました!提案中のプランが実現することを楽しみにしています。広辞苑も買います(笑)。

    こちらこそ、ありがとうございました。

    編集後記:社会の不条理を解決する建築士

    シングルマザー支援や産後ケアなど、様々な社会問題を解決していく秋山さん。

    建築士の仕事や興味関心がこんなにも幅広いことを知り、とても勉強になりました。

    多忙なのにも関わらず、家事育児にかなりコミットされているのも驚き。

    でも、何でもスマートにこなすスーパーパパというよりは、秋山さんが周りの人と本音でぶつかり、いろんな覚悟を積み重ねてきた結果のように感じます。

    仕事面でも家庭面でも、とても刺激を受けた取材でした!

    ※参考
    平成29年(2017)人口動態統計の年間推計 厚生労働省
    平成21年度「離婚に関する統計」 厚生労働省

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